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明大生からの質問第4弾「子供に商売を継がせるか」への回答

投稿日時:2006/05/10(水) 10:35rss

明治大学商学部「ブログ起業論」受講生と、
経営者会報ブログの社長ブロガー有志による
明大生との毎週一問百答」への回答をいたします!


<質問>

将来、自分が親という立場になった時
自分の子供には、どのような職業についてもらいたいですか?
自分のような経営者になってもらいたいですか?
それとも自分とは違った職業ですか?

(明大商学部CB講座 成田雄一郎さんより)



■自分の子供には、どのような職業についてもらいたいですか?
──────────────────────────────

私には、二人の小さな息子がいますが、
子育てで「これだけはすまい」と誓っていることの一つが、
「どのような職業についたら良いかアドバイスする」ことです。

なぜなら、

「親の時代に親の目から良く見える仕事」と
「子の時代に実際に良くなる仕事」とに

大きなギャップがあることが多いので
往々にして判断を間違えてしまいそうだからです。


つい先日も、父と毎朝の対話をしている時に、
「構造不況の繊維という仕事を継がせて申し訳ないね」
という言葉が、思いがけず父の口からこぼれたのです。

もちろん、私は、今更それを恨んでいるわけでもなく、
後継したことを悔やんでいるわけでもありません。

むしろ、難しいことに挑戦しよう、
先行者利得ならぬ残存者利得を目指そうと
ひそかにやる気満々なのです。

しかし....

そうつぶやかざるを得なかった父の無念な気持ちを思うと
何ともやるせない気分になりました。


同時に、十数年前の父の言葉を思い出しました。

他社での修行を終え、父の会社に入る時には、
まだ景気も絶好調で「こんなにいい商売はないよ」と
自信満々だったのです。


望むと望まざるとにかかわらず
時は流れ、好調業種も常識も変わってしまうのです。


これは、何も、オーナー中小企業に
限った話ではありません。

私の親友のお父さんは、かつて商社で活躍されていました。
しかし不慮の政変で大変な目にお遭いになりました。

そこで、息子には、そんな激変の無い
生命保険会社を勧めたそうです。

たしかに私が大学を卒業した20年前は、
優秀な成績を収めた大学生はこぞって
銀行や保険会社に就職したものです。

ところが、今回のバブル崩壊で、一番の憂き目に遭ったのは、
みなさんもご存知の通り、その親友をはじめ
金融機関に入った友人たちでした。

ですから、その後、彼は、自力で
メーカーに転職をして新天地を求めたのです。

また、親友のお父さんはというと、退職後、
専門知識を活かして起業され、商社時代よりも絶好調で
生き生きとされているとお聞きしました。


どうやら、親の成功体験や失敗体験が鮮烈であればあるほど、
子供にアドバイスをしたくなるのかもしれません。

しかし、かの相場師「是川銀蔵」氏でさえ、
わが子のことになってしまったら最後、、
私情と思い込みで相場を見誤ったのです。

本当に、わが子のことを思うのならば
あえて語らずで行こうと思います。(できるでしょうか?)

もし訊かれたら

「時は流れるので私の常識は古くなる」
「親の言う(人の行く)裏に道あり花の山」

などとだけ答えるようにしようと思います。
(できるでしょうか?)


■自分のような経営者になってもらいたいですか?
──────────────────────────────
わが子を後継者にするつもりは、私にはありません。

これは同族経営を否定しているのではなく、
その長短所をよく知っている上での判断です。

私の次の後継者は、三兄弟で話し合って、
三男にという心積もりですが、
その先は、同族外の経営者になるでしょう。

私たちの第二創業は、

企業を開かれ社会貢献できる公器にしつつ
(株式公開はしませんが)

次の次の後継者を探し育てることが
最終目標の一つといっても良いのです。

それに、私の子供も三男の子供も幼すぎて、
「権腐十年」を心得た社長十年任期で考えると、
経営者になるのに間に合うはずもありません。


■ それとも自分とは違った職業ですか?
──────────────────────────────
それでは、親の会社以外で
経営者になって欲しいかどうかですが.....

経営が好きか?経営者に向いているかどうか?は、
本人の育ちと性格によるので今のところ何とも言えません。

育ちについては、私と子供とは
かなり環境が違うと考えています。

私は、ただいまと帰れば仕事場...という職住一致の環境で、
三代目長男として刷り込まれて育ちました。

ですから、経営者になることに
何の疑いも持っていませんでしたし、

その辛さと面白さを小さいときから
目の当たりにしていました。

また、母も商家の娘ではないものの
農家の出身でした。

下町でしたから、周りも
自営業の子供ばかりだったのです。

性格も、たまたま経営者に
向いていたかもしれません。


しかし、今、わが子は、職住分かれた住宅地で、
義父がお勤めをしていた会社の社宅で育った
非商家の妻の手で育てられています。

ですから、「てんびんの詩」とは
かなり違う環境にあると言えましょう。


ただし、これも親の勝手な憶測で、
本人には特性があるかもしれませんし
無いかもしれません。

私が残す明大商学部での講義ビデオや課題図書を、
そして拙著や社長ブログの足跡などを、

いずれ見たくなるかもしれませんし、
まったく興味を示さないかもしれません。


やはり、やや寂しくはありますが、

最後は自分自身で決めて
自分自身で責任を持ってもらう、

「覚悟する」

より他には、ないとも思うのです。


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