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2006年10月27日(金)更新

空外記念館で今岡昭雄さんに山本空外上人の素顔を教わる縁起(2)

作品にしばし見とれていますと....

館内に佇んでいた1人のご老人が
話しかけてくださいました。

空外記念館と今岡さん

お話を伺っているうちに分かったのですが...

晴耕雨読の暮らしを切望された
空外上人が選んだ小さなお寺「隆法寺」

そのたった16軒しかなかった
檀家のお1人だったのです。

今岡さんが、まだ幼い頃、
空外上人が隆法寺に移り住んできたそうです。

それからというもの、今岡さんは
すぐおそばで上人の暮らしぶりを
目の当たりにしてきたそうです。

今となっては、この里でも数少ない
空外上人の生き証人なのでした。


「空外上人は、決して威張りませんでした。
 まだ私が小さい頃おつかいに行っても
 上人自ら歓待してお茶を入れてくださいました。」

「上人は、どんなときにも
 ナンマンダブ ナンマンダブと
 つぶやいていらっしゃいました。」

「いつも、わたしたちにもわかりやすく
 教えてくださいました。
 上人にお会いできましたことは
 本当にありがたいことだと思っています。」


朴訥としたお言葉の端々から、今岡さんが
心から上人を敬愛していたこと、ご縁に感謝していることが、
じんわりとあたたかく伝わってきます。

無学な私には、高名な哲学者や仏教学者の講釈よりも
今岡さんの眼に映った素顔の上人の姿の方が
静かに深く胸に染み入るのです。



 出西窯webより~「従衆縁故必無自性」
 一切がおがけさまで、自分の手柄など皆無であるという意




聞けば、今岡さんがお隣で墨を磨りながら
空外上人が筆を持つという機会も多かったそうです。


「空外上人の字が上手いかどうかは
 私にはわかりません。」


親しみと謙虚さをこめて、今岡さんは微笑みました。

そして、身振り手振りで筆さばきを再現されると、
まるでそこに空外上人がいらっしゃるかのようでした。


「空外上人は筆を握るように持って書きました。
 書いている時は、筆が踊っているように見えました。」

「この太い木の切り株を、じっと見つめていたかと思うと、
 すごい速さで一気に書き上げて、気がつくと丸く
 きれいに収まっていたのです。」


また、記念館2階にある書庫には、
カント全集など、空外上人が生涯をかけて
集めた貴重な原書が並んでいました。

今も、馬車で何台分もの本が運び込まれた日のことを
思い出すそうです。

そしてこんな逸話も、笑いながら
教えてくださいました。


「欧州からいらっしゃった哲学の先生が、
 本国にも揃っていない本があり
 国宝級の価値がある。
 こんな田舎にあってはもったいない 
 とおっしゃったのです。」





それにしても、空外上人は、
なぜ京都や広島ではなく、
この地に記念館を作ったのでしょうか。


「この場所がとても気に入っていて、
 ギリシアのオリンピアに似ていると
 よくおっしゃっていました。」


と、今岡さんは教えてくださいました。

しかし、本当の秘密は別にあったのかもしれません。

記念館を見た後、お寺の集会所とおぼしき場所に
ご案内され、さらに多くの書に触れることができました。

その時、今岡さんは祈りを捧げるようなポーズで
こんな話を教えてくださいました。


「空外上人が住職を代わられた後も、
 いつでも先生が帰って泊まれるように
 住職とも話して、みんなでこの家を建てました。」

 ここに初めて、空外上人がいらっしゃった時、
 そのことをお話しますと、いつもとは違って、
 すぐ席をはずされてしまいました。

 心配して、様子を見に行きますと
 上人は、ありがとう、本当にありがとうと
 涙を流して喜んでくださったのです。」


 次回に続く>>>


久米 信行縁尋奇妙
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