大きくする 標準 小さくする

2006年12月21日(木)更新

虎ノ門DOJO最終回 日下公人先生講演で驚いたこと



先日、東京財団 虎ノ門DOJOの最終回(258回)で
尊敬する師 日下公人先生のお話を伺いました。

「東京財団・虎ノ門DOJO(道場)は
 政治、経済、教育、社会などの今日の日本が抱える諸課題を
 深く考察するとともに、先駆的なアイディアや最新情報の発信、
 さらには世に埋もれている人材の発掘を行う議論の場です。」



最後の「虎ノ門DOJO」で講演する日下公人氏


日下先生の本は、学生時代から愛読しておりました。

ソフト化経済センター客員研究員として
日下スクールの末席に座らせていただき、
深い精神性に裏付けられた融通無碍な直観力、発想力を
目の当たりにする、ありがたいご縁に恵まれました。

私も1年前に、虎ノ門DOJOで講師を勤める光栄に預かりましたが、
その時のテーマでもあった拙著「メール道」「ブログ道」について
日下先生から「タオですね」と一言で看破していただいたことは
おそらく生涯忘れないことでしょう。

さて、日本財団の広報ブログにはカタイことが書いてありますので、
笑い渦巻く講演と行動の中で、私が驚いたことの数々から
日下先生のお人柄を示すものをいくつか挙げてみましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・来年は、官公庁、教育、マスメディア、大手製造業など
 5つの大崩壊が起きそう(マスコミ受けして言うなら五重塔が壊れる)

・安倍首相が創設を目指す重要会議のメンバーを見れば
 虎ノ門DOJOで講師をした人たちが並んでいました。

・通常であれば、普通の人であれば、
 そこで東京財団の会長も虎ノ門DOJOも
 ずっとずっと続けたくなるはずです。

・しかし、今回、東京財団の会長は後進に譲り
 (後任は構想日本加藤秀樹さん)
 虎ノ門DOJOは最終回を迎えたのです。

・当日配られた小冊子でも、日下先生は
 「政策研究をしていると自分が偉い気になってしまう人」を
 戒めていましたが自ら実践したのでしょう。

・そして新たに提言をしたのは、
 お金をかけ、どこかからお金をもらって
 色のついた政策研究をするのではなく

・この会に集まった一人ひとりが、親しい人たちとホームパーティ
 でも開いて気軽な雑談をすること。

・そんな中から良いアイディアが生まれるので、教えてほしい。

・それらを集約して、安倍首相はじめキーマンに提言するとのこと

・奥さま同伴でパーティで意見を交わすダンナさまを見れば、
 ちょっと見直して夫婦も円満になる効果もあるはず

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

これからは、気の合う仲間プラスαでの非公式な雑談が重要になるのは
政策研究に関わらず、商品やサービスの企画でも同じでしょう。

会議室にこもったり、ネットの中で難しい議論を交わすよりも、
少人数で向き合って和気藹々と話した方が建設的な意見が出るはずです。

それを、心ある世話人がネットワークを活用して集約し、
キーマンに直接伝えれば、話が早くなるはずです。




よく考えてみると、日本の未来はこうなります。


その後、買い求めた日下先生の新著2冊を拝読しましたら、
相変わらずの視野の広さにまた驚きました。

この本を読むと、「原爆」の二文字に拒絶反応を示し、
またも軍国主義の復活かと危惧するかもしれません。

しかし、これまでの日下先生の著書や
日経BPのネット連載「現実主義に目覚めよ、日本!」を
愛読している方ならおわかりの通り、

原爆と軍拡はイコールではなく、むしろ軍縮になり
配備せずにアナウンスメント効果だけでも外交上優位になる
「無用の用」をなす囲碁の妙手のようなもの

(かつて、日下先生のパネルディスカッションで司会を務めた時、
 「先生がこれから一番したいこと」をお聴きしましたら、
 「一局でも多く囲碁を打ちたい」とお答えになりました。)

「21世紀世界は日本化する」という予言も
うっかり覇権主義と誤解を受けがちですが、

品質の高い工業製品やポケモンなどのアニメと同様に、
既に物質的にも精神的にも豊かで争いを好まない
「日本人の心」を伝えて、少しずつファンを増やしていくための
即ち、異文化も融合して争わずに済む上等な社会を作るための
過渡期における方便だとわかるでしょう。


また、これまで国が無駄遣いしてきたお金で米国債を買っていれば
という下りを読めば、悔しがる方もいらっしゃるでしょう。、

しかし、その一方で、マスコミでもあまり報道されないこと

資源輸入と製品輸出に頼る加工貿易の国家から、
利息・配当や特許料・商標料でも黒字に変わったこと

行政改革でも画期的な進展が進みつつあることを知れば、

あまり先行きを悲観することもなく、
これからの楽しみもあることがわかるでしょう。


日下先生がよく講演などでもおっしゃるように、
昨今は、マスコミも知識人もこぞって「日本悲観論」を書くので、
あえて「日本人が自信を持てる楽観論」を
書いていらっしゃる一面もあり

1億総楽観になったら、きっと逆のことを
主張されるかもしれません。


「固定観念を捨てて、すべての事象を相対化して見よ」

...と日下先生から良く教えられるのですが

耳慣れない議論や、過激に見える意見も、実のところ
部分的で短期的な議論やゼロイチのデジタルな二元論を超えて
自由に発想できる人を、野暮な愚問を発しない自立した人を
増やすために、わざと?やっているのではとさえ思います。


 

  くよくよしない!―仕事・人間関係・お金・健康…

それでも、「日本精神」と聞くと「右傾化」と結びついてしまう方や、
どうも「元気がわいてこない」人には、ほぼ同時期に出版された、
ひろさちやさんとの対話集が参考になります。

うっかり経済に代表される現世利益でしか判断できなくなった人には、
特によくきく辛口の言葉が並んでいます。

宗教と聴くだけで避けてきた人ほど実は抵抗力がなくて、
インチキ宗教にだまされやすいと聞いたことがありますが、

 【経済は学んでも金持ちにはならない】 -日下公人
 【すべて「いいかげん」でいいのが宗教】-ひろさちや

と扉に書かれたこの本は心のストレッチになり、
現世利益を論理的に解くインチキ宗教にも
惑わされなくなるかもしれません。

そう言えば、最終講演でも、日下先生は

「世は脳科学や脳力ブームだが、脳に注目するとますます悩みが増える。
 禅は脳のスイッチを切ることで体が健康になると教えたのに」

というようなことをおっしゃっていました。


この本は、本講演で提言されていた「よき雑談」の見本でもあります。

お二人は、この本で、決して予定調和の対談をしているのではありません。
むしろ相容れない意見と、意気投合している意見とが交錯しています。

しかし、お互いの違いが明らかになった上で、
認め合い仲良くなっている様が見て取れるのです。

お互いの心を明かさず、議論も交わさず、
見かけだけの仲良し関係が増えている中で、
この本を読むと「よき雑談」の大切さがわかります。


とはいえ、虎ノ門DOJOが終わるのは
ちょっとさびしい気もいたしますが....

日下先生と虎ノ門DOJOを支えてきた吹浦 忠正さんの
ブログ記事「日下会長退任、これからもご指導を
という愛情あふれた文章に深く共感しつつ、

お二人に心から御礼を申し上げたいと思います。


それにしても....

「役割を終えたら、それが絶頂期であっても自ら辞められる人」

....私もそんな人物になりたいと思いました。


 ▼虎ノ門DOJO
  http://www.tkfd.or.jp/events/dojo/index.shtml

 ▼現実主義に目覚めよ、日本!
  http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/p/index.html


久米 信行縁尋奇妙
http://kume.jp http://t-galaxy.com

■──────────────────────────□
 経営者会報ブログTOP http://gate.keikai.topblog.jp/
 経営者会報編集部ブログ http://editors.keikai.topblog.jp/
□──────────────────────────■
<<  2006年12月  >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31